亡くなった大杉蓮さんと『バイプレイヤーズ』と大林宣彦監督の映画と。
『anone』と被ってるのでTVERで観てる『バイプレイヤーズ』はまだ今週分の第4話を観ていないんだけど、大杉蓮さんが亡くなった今、実名での作品『バイプレイヤーズ』が本当に複雑な様相を呈してきたよ。
亡くなった大杉蓮さんとこのドラマの関係はまるで大林監督『北京的西瓜』みたいだと思った。
『北京的西瓜』ではベンガル演じる八百屋のおとうさんが中国人留学生たちに出会い、彼らをささやかながらも支援することで「日本のおとうさん」と呼ばれ愛されたという実話を基にした内容だったが、この映画の最後のクライマックスシーン、北京で撮影する予定だったのが、現実に起こった天安門事件により中国に渡航することが出来なかった。そのシーンで八百屋のおとうさんを演じていたベンガルが、役者ベンガルに戻り、スクリーンの向こう側から観客の私たちに向かって言う。
「映画は現実を越えることは出来なかったのです」と。
勿論その言葉はベンガルとしての言葉ではなく、監督・大林宣彦からの言葉である。
そしてそれは映画監督としての敗北の言葉ではないと私は思っている。
大林監督はずっと、叶わなかった恋について描いている。この『北京的西瓜』では、現実ではそこにあった北京行きが映画では叶わなかった、そのことがまさに叶わなかった恋だと描写しているようだった。叶わなかったからこそ、永遠に夢見続けるもの、それが大林監督にとっての恋であり、映画ではないかと。
ドラマ『バイプレイヤーズ』は、現実が作品を裏切っていった。それでもきっとこのドラマの結末は、それ自体が叶わぬひとつの恋のような形となって、永遠に胸に刻まれていくのだろう。それを見届けたい、と思っている。