「夜明け」
是枝監督の助監督だった広瀬奈々子初監督作。
主演は柳楽優弥。
柳楽くんは顔立ちが濃くて、濃すぎて、『おんな城主 直虎』や『銀魂』などのけれん味ある役がとても似合う、と感じていた。もちろん、『ゆとりですがなにか』や『アオイホノオ』の柳楽くんも好きでしたけど。
そして、『誰も知らない』のあの柳楽くんは、もう二度とない、あの時間・あの映像の中にしかいない少年だった、と思っている。
ところが今回の『夜明け』を観ながら「ああ、あの『誰も知らない』の少年が成長したようだ。なんとか大きくなって今ここにいて、そして橋の上で泣いていたんだ」などと思ってしまうのが不思議。
『夜明け』は、ホモソーシャルな世界だなあ、と思って観てました。
哲さんは亡くした息子への喪失感から、拾ってきた青年シンイチを求める。従業員の宏美と再婚することはその前に決めていたのに、シンイチと出会って、死んだ息子と同じ名前のシンイチと出会って、擬似親子のようであり、師匠と弟子のようでもある男だけの世界のほうにより惹かれていっているようでした。
もう一度誰かと寄り添うならと選んだ宏美との生活だったはずですが、宏美、宏美の元夫との娘、宏美の母親の女系家族より、熟練工である従業員の男たちと息子のようで息子ではないシンイチとの男だけの世界のほうに、きっと哲さんはより惹かれている。本当に、その世界はとても煌いて見えた。
けれども、その世界の底を覗くと、そこには「秘密」や「言えないこと」や「見ないようにしてること」がある。実は彼らはかつて、そういう世界の中に生きてました。哲さんは決して妻や息子とうまくいってたわけではなさそうです。妻や息子の気持ちから少し目をそらせて生きていたのではないでしょうか。シンイチ、ではなくて光も、多分そのように生きてきたのでしょう。家族を失った哲さんと、生きる意味を失っている光が出会い、そこで生まれた小さな世界にもまた、秘密と言えないことと見ないようにしていることが降り積もっていきます。
「シンイチ」を剥ぎ取った「光」が再び選んだ世界は、哲さんを傷つけたでしょう。光だってずっとシンイチのままでいられたらという想いはあったでしょうし、そんなあやふやなままの夢を見ていたかった、と映画を観ている私は思いました。それでもまた、もう一度新たな世界を選びなおさないといけないのでしょう、光は。
もうなにも見ないことにして生きていくことを、やめるために。
夜が終わって、また朝が来る・・・・。
それにしても。柳楽くん、ほんっと顔のパーツが1つ1つ、美しいわ。。