おでかけの日は晴れ

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「星空下的傾情」第一夜

以下の文章は、私が1998年に作った個人サイト「快楽有限公司」の中でアップしていたもので、CSで放映された、トーク番組「星空下的傾情」についていた日本語訳を拾って文字起こししたものです。

 

「星空下的傾情」
(第一夜)

 


これは香港の人気テレビ番組「星空下的傾情」というトーク番組です。97年に放映された回では、張國榮レスリー・チャン)、張曼玉マギー・チャン)梁家輝(レオン・カーフェイ)がゲストとして登場しました。それを2回に渡り放映したものです。
とっても楽しいものなので、見てない人は是非、会話の内容だけでもお楽しみ下されば幸いです。

さて、このトークは終始すごくリラックスし、とっても自由な感じ。まるでカメラを意識していないような。でもカーフェイだけは結構カメラ目線で喋ってます。
レスリーは殆どカメラを見ることなく、それどころか鼻の調子が悪いのか点鼻薬持参で、しょっちゅうそれを鼻に突っ込んではシュッシュしてます。かと思うと、話が白熱すると、隣の人の手や膝に自分の手を置き、すごく熱心に喋ってます。
マギーはそれほど愛想のない顔で、しかし終始お菓子をボリボリと食べてます。
そしてみんなポンポンとテンポ良く喋ってます。
カーフェイは、話し出すと長いけれど、どちらかというと全ての話を聞いているというタイプ。レスリーは喋っているうちにすぐ話が脱線してしまいます。そんな訳で、話の流れが時折おかしいですが、これは文章に起こす上でカットしたわけではなくって、大抵レスリーの脱線です。(笑)

 


そのスタジオセットは、二つのソファが横に並んで置かれていて、前には大きなテーブルが一つ置かれている。
レスリー、マギー、カーフェイが、そして司会の林建明が入ってくる。林建明以外は何故か3人とも黒い服。レスリーは上に革のジャケットを着ている。マギーは黒のタイトなパンツがすごくかっこいい。


張國榮 (照明を)上から照らさないで。薄いから(笑)
林建明 みなさん、ようこそどうぞ。

4人はソファに座る。司会の林建明とレスリーが一つのソファに、そしてもう一つにはマギーとカーフェイが。建明がそれぞれ3人を紹介する。

レスリーのコンサートについて

林建明 みんな近況教えて。(レスリーに)今、すごい人気よね。ちょうどコンサートも終わって。あの晩、偶然2人共来てたわね。あの晩、みんなが見てたけど、一番良かったのは…当てて?
張國榮 あの靴?
林建明 それも良いけど…アンコールなしだったこと。他の人は絶対に(レスリーが)出てくると思ってたけど。でもさっぱりしててよかった。
張國榮 だってたくさん歌ったもの。事前にアンコールなし宣言してたし。観て充分ならそれでいいでしょ。
林建明 新聞にいろいろ書かれてたけど、事実と全然違うし、記者は実際に見るべき。見ないとわからない。よく見てから悪口言って欲しいわ。
張國榮 よく見たら褒めるよ、バカだな(笑)

レスリーが一度引退したあと、すぐに復帰したことを悪く言われていることについて、建明のマスコミ批判が少し続く。

張國榮 一度決めたことを変えたからでしょ。
張曼玉 私は22で結婚宣言をして、32の今も独身だわ。

と言いつつ、彼女は目の前のお菓子をバカスカ食べている。
(注:そんなマギーも去年にフランス人監督と結婚)
建明に「あなた、よく食べるわね」と突っ込まれるマギー。マギーは笑いながら食べ続けている。
一度移住したカナダについて、


張國榮 カナダは移民して、始めは天国だと思ってた。でも結局香港が天国だった。退屈で我慢出来なくなった。景色は素晴らしく、仙人の気分だった。毎日酒を飲んでは詩を書いている。毎日それ。鹿がやってきて、庭の花を食べる。いい眺めだった。でも6週間経ってもまたやってくる。「またお前? 全部食べる気か? 出て行け!」ってね。(笑)…なんだか死を待ってる気分になって。

そのあと、カーフェイがCDを出した話が少し続く。

●友達について

林建明 (今日の)この組み合わせは3人の希望だけど、友達?どの程度の友達?
張國榮 カーフェイとは仕事で2度会った。マギーとは何度も。長い間何の問題もなく、良い友達。
張曼玉 私の2作目で(レスリーと)知り合ったの。
林建明 どの程度の友達?毎日会うとか、心の友とか、何かあれば助け合うとか。
梁家輝 あまり会わない。僕は家庭的で生活のペースが違うから。彼は家で自分の好きなことをしている。僕は家の雑用が好き。撮影より喋ってる時間が多くて友達になった。
張國榮 「東邪西毒」?
梁家輝 いつも喋ってた。カナダに行くまで。
林建明 相通じるものがあった?
梁家輝 共通の話題があった。
張國榮 僕がサソリにかまれた時も心配してくれた。(と、心配そうに自分を見ていたカーフェイの顔真似をするレスリー
梁家輝 心配だったもの。現場は何も無い所で、撮影はつらいし長かった。ある晩、突然(レスリーが)サソリに噛まれて。
張國榮 トイレに立って戻ってきたら噛まれてた。痛くてとって捨てたらサソリだった。透明な子供のサソリだったけど、黒かったらおしまい。
林建明 何回も聞くけどホントに親友?
張曼玉 全然会わない時でも気持ちは通い合ってた。出入りが激しい世界だけど、3人共生き残って、あ、まだ頑張ってるって。

建明が「私は?」というジェスチュアをし、みんなで「4人」と付け加える。その言葉にみんなで楽しそうにワインを乾杯する。

林建明 一人ずつ、他に3人友達をあげて。
張國榮 この3人。
林建明 それ以外。
張國榮 アニタ・ムイ、チェリー・チェン、ブリジッド・リン。
ブリジッドは可愛い。本当にいい人だよ。(と、白髪魔女傳撮影時のブリジッドの話をする)
林建明 マギーは?
張曼玉 友達はたくさんいるけど、もしも1人あげるなら…。
林建明 何でも安心して話せるような。
張曼玉 (カーフェイを指し)彼は駄目?
林建明 他に。
張曼玉 いない。
林建明 軽い相談出来る人は?
張曼玉 それなら大勢いる。
林建明 例えば?
張國榮 僕もだろ?
張曼玉 そう。・・・じゃあ、チェリー。(と、チェリーとの間に最初芽生えた友情と、その後の確執、そして再び仲直りするまでの話をする)
林建明 カーフェイは3人思いつく?
梁家輝 僕は世界中の人が友達。
林建明 器用なのね。
梁家輝 というか気ままにね。僕は俳優として人の気持ちがわかりやすい。人の気持ちを理解したら、仲良くなりやすいしね。特別と言ったらジャッキー・チョン。10年間電話もして来ないけど、本当に会いたい時に偶然会えたり。そんなことが何度もあって。電話をしなくても何かが通じてる。
林建明 俳優だと友達は出来にくい? 何か条件はある? 人と話してて、この人はもしかして・・・下心?
張國榮 それはない。下心とは思わない。
張曼玉 残念なのは撮影中・・・、
張國榮 そう、少し仲良くなって、
張曼玉 撮影が終わったらそれっきり。
林建明 芸能界以外の人では? 友達を選ぶ条件は?
張國榮 お節介過ぎない。ブランド志向も嫌だ。
林建明 それは賛成。
張國榮 安っぽいもの。
林建明 それは何故わかる?
張國榮 見た感じでわかる。カーフェイだから、マギーだから、レスリーだから・・・。すぐわかる。騙されない。僕たちにも20年の経験がある。
張曼玉 私、そんなに年じゃないわ。(笑)
林建明レスリーに)あなたを好きで友達になりたいと思ってもダメ?
張曼玉 好きなら友達になれるとは限らない。
張國榮 感情は犠牲には出来ないから。楽しめて初めて友達。
梁家輝 そう、感情は育てられる。会ってすぐに親友にはなれない。
張國榮 いや、初対面でもわかりあえる事もあるよ。ピンと来るか来ないか。僕が一番嫌なのは人の服をじろじろ見る人。
張曼玉 何故?
張國榮 眉をしかめて)そんな人、安っぽいよ。友達なのに服見てどうするの。
張曼玉 私が嫌なのは、相手で態度を変える人。私には優しくしてスタッフには横柄だったり。そういう人は受け入れないと思う。(と、急に建明がリアクションした顔を見て)あなたって18の子供みたい。経験豊富の筈でしょ? あなたのこと知らないから…。こんな人、はじめて!(と、半ば呆れたような笑い顔で言う)
張國榮 彼女は番組のホストだからこういう表情なの!(建明はその言葉に爆笑している)
張曼玉 違う! 私は友達にならないかも。そんな良い子と正直に話すなんて無理。
張國榮 (建明に)さっきの目つきはよくないぞ。(と、目をまんまるにし、口をポカンと開けた建明の顔の真似をしてみせる)
張曼玉 反応がオーバーなのよ。
張國榮 そっちに座る。(建明に)何でも聞いて!(と、レスリーは建明の隣から立ち上がり、マギーとカーフェイの間にすっぽりと座る)

CM
CMがあけると、レスリーは再び建明と同じソファに戻っている。


林建明 3人が友達同士なら、お互いに何かアドバイスはない? マギーの欠点はこれとか、レスリーはここがダメとか。
張國榮 僕は口が悪い。ストレートすぎて。
梁家輝 相変わらずだね。
張國榮 自分にも他人にも厳しい。だから友達が少ない。
林建明 じゃあ、マギーの長所とか短所は?
張國榮 (少し声を落して真面目な顔で)彼女はすごい才能の持ち主。(マギーは「ええ?」というような顔をしている。)急に開花して2作目に僕と共演。そうだろ?
張曼玉 むちゃくちゃだった。
張國榮 むちゃくちゃ揉めたね。
張曼玉 そう、ケンカした。
張國榮 「私のセリフ、減らさないで」って。
張曼玉 違う。私のセリフ変えたの。当時セリフが上手く言えなくて。せっかく覚えたのにすぐ変えて。撮ったらまた気に入らなくて。無理って言ったのに、この方がいいからって。変えてもいいけど(セリフを)すぐ言えないから。変えるなら早めに言ってねって。
張國榮 それで怒った。
林建明 なるほど。
張國榮 でも次の日にはケロッとして。
張曼玉 彼は口が悪くても言ってることは面白い。私にも移っちゃう。彼とその手の話をするのは楽しい。
張國榮 人を傷つける気はないけど。
張曼玉 でも時々スゴイ話をするね。
林建明 何か直すべき所は?
張國榮 絶対あると思うけど難しいな。彼女は生意気って思われてる。僕も同じだけど。同じ感覚の人間なら嘘は必要ない。悪いことは悪い。そうでしょ? だから欠点とは思わない。無理して合わせる必要などないし、自分の友達は自分で選ぶし。
張曼玉 記者じゃなくて取材が嫌い。
張國榮 当たり前だよ。芸能生活20年、今更何を聞くの? まだ聞くことある? 新人でもない。(こちらから)呼んだわけでもない。一番不健康なのは、そういう人多いんだけど、誠心誠意取材に答えたのに全然違うこと書く人。僕の時間返せよ。2時間あればいくら稼げると思う? この番組のギャラも高いよ。ね? 無駄なことするなよ。
梁家輝 今わかった。彼はホントにストレート。
張國榮 100%理解した?
梁家輝 当然だろ。ほどほどにしろ。(笑)
張曼玉 (急に思いついたように)あ、カーフェイには(短所を)言える。本当に親しいから。
梁家輝 まるで批評大会。
張曼玉 彼はいい人で、困った人を見ると助けるけど、そのせいで自分のことは後回し。

と、マギーは、カーフェイが自分について立てた計画を、いつも他人を優先するせいですぐに変更してしまうことを指摘する。

張曼玉 (カーフェイに)自分の言ったことを変えずに責任を持って。
梁家輝 確かに欠点は欠点。わかってる。
張國榮 直そうと思う? 僕は変えられない。(マギーに)友達ならそういうことも受け入れろ。計画変えたって周りには迷惑かからないんだろ?
林建明 仕事ではどう?
張國榮 ない。彼はプロ。全て計画通り。
梁家輝 仕事ではプロの自覚がある。
張國榮 この3人はプロだよね。
梁家輝 うん。

●家族の話

林建明 マギーは家の話をしないけど、どんな家庭? 言いたくない?
張曼玉 別に普通の家族。

と、両親と姉が一人いることを言う。マギーの姉は周りからきれいだと言われているらしい。「私は『可愛い』の」と言いながらほんのちょっぴり姉に対する嫉妬のようなものを見せる。

張曼玉 私が16で両親が離婚。
林建明 ずっと一人暮らし? 俳優になったせいで家族とは疎遠になった?
張曼玉 会える時間が少ない。ずっと仕事がない時は母と毎週、飲茶するけど。撮影が始まれば一日休みがあっても出来ない。
張國榮 3人とも金持ちの子じゃないよね。
林建明 私もそうよ。
張國榮 でも俳優になって少し家を助けた。家の釘一本、絨毯一枚も親の血と汗の結晶だったし。それは誇りに思う。
林建明 私は自分の経験で言うと、「孝行したい時に親はなし」。貧しければ自分で稼いで家族に楽させようと思う。でも母が死んで思った。もっと一緒にいたかったって。家族は近くにいることが大切。それから6年。いつも母を思い出す。・・・ダメ。これ以上話せない。(と、泣きそうになるから、とジェスチュアで示す)
梁家輝 僕も考えたことがある。僕は常に人と違う見方をするけど、家族のために稼いで少しでも楽させたい。思い起こして誇りに思うことは、両親の心配は僕が道を誤ること。人に子供の悪口は言われたくない。女たらしとか何とかいろいろ(笑)。俳優になって何年も経つけど、物質面と精神面で親は満足した。でも自分の人格は発展途上だから、失望させたくない。お金をあげることより重要なこと。
林建明 私は母との時間が足りなかったと思う。
梁家輝 それは孝行娘だから。思ってることは永遠に出来ない。
張國榮 面白いと思うのは、父母の出会いも縁、自分と母親も縁。別れた時に縁が切れた。
林建明 (パシッとレスリーの膝を叩き)うわー、スゴイ! 顔相見て言われたの。ここが(と、自分の額を指差して)親不孝の相だって。
梁家輝 親の縁がない。
林建明 考え付かなかった。今日やっとわかった。
張國榮 僕はそう思う。
梁家輝 (建明に)母親は育てた娘が幸せならそれで充分満足なんだ。
林建明 ああ、乾杯! 乾杯乾杯!
張曼玉 楽になった?
林建明 おかげさまで! 長い6年だった。
張國榮 よし、ズバリ効いたな。僕たち心理学者だ。相談料1人ずつ100ドルね。

CMが入る
●母親の話


林建明 家族で常に会いたい人は?
梁家輝 いる。母親。以前はいつも喧嘩してた。この世で一番合わない人だった。話題がない。二言目でもう喧嘩。
林建明 何故今は変わったの?
梁家輝 自分が父親になったから。それが大きい。状況で人は変わる。俳優として、夫として、父として、子供として。完全に事情が違う。何事も経験。サソリに噛まれるのも経験。今も母と喧嘩することはあるけど、僕はまだ全てを学んでいない。今は父親として勉強してる。毎日が新鮮だよ。今まで学んだことは別の角度で見てみる。
林建明レスリーに)子守りのお姉さんは?
張國榮 死んでもう7年だよ。僕も泣くよ。言いたくない。可愛がってくれたよ、結婚もせず。
梁家輝 子守り?
張國榮 そう。親とは縁がなくて。
林建明 あなたも?(と、レスリーの額に手をやる)
張國榮 僕は顔相には出てないよ。
梁家輝( 建明をからかうように)騙されたんじゃない?
張國榮 母と住んだのは半年だけ。
林建明 コンサートによく来てるわよね。
張國榮 ああ、最終日、母のために1曲歌った。息子として急に母のために歌いたくなった。
梁家輝 それが正直な気持ちだろ?
張國榮 またコンサートを開くかわからないし、次回母は来られないかもしれない。(注:実際、98年秋にレスリーの母親はガンの為死去) だから歌った。喜んでたよ。姉達も泣いて喜んでいた。感動的な晩だった。ヤラセじゃない。素直に歌って僕もよい気分だった。
梁家輝 なかなかあることじゃないね。
張國榮 母に電話で愛してるとは言いにくいし。
張曼玉 私もそう。なんにもしてない。
梁家輝 僕もCDあげたけど、母は何にも感じなかった。

それを聞いて4人とも爆笑する。

梁家輝 なんの批評もない。電話したら「もう聞いたけどどうかした?」って。
張國榮 僕の母は僕に遠慮する。僕の家で「お手洗い貸して下さい」って言うんだ。

建明だけが軽くアハハと笑う。

張國榮 本当だよ。みんなには笑い話でも僕は傷ついた。君たちだってうちに来てそんな言い方しないだろ? 他人行儀なんだ。僕は出生後、祖母と暮していたから。
梁家輝 自分でそう思うなら時間を作って一緒に過ごせよ。
張國榮 季節の変わり目に服を作ってあげたり。そんなことしか出来ない。家を買って使用人を雇って、お金をあげたり。でも僕たちは永遠に友達じゃない。
梁家輝 僕も喧嘩してる時は思った。生みの親なら僕の考えがわかる筈。こんなに揉める筈はないって。でも別の角度で見たら彼女は母親。僕を産んだ人。友達じゃない。マギーと同じ感覚では話せない。反対に母も僕を全然理解できない。何故理解出来ない? でも逆に考えれば理解するのは無理。
林建明 本当に困った時、帰る家があって一番の支えは親だと思わない?
張曼玉 思う。私が挫折したり悪い噂を書かれて一番心配するのは母。
張國榮 君を愛しているんだ。
張曼玉 私は香港、母はイギリスで、何年も離れていたけど気持ちは通じてた。でも母と出来るのは食事ぐらい。
張國榮 込み入った話は?
張曼玉 話しても多分理解できない。映画の話も喜ばないし。でも本当に困った時には側にいて、話を聞いてくれる。
張國榮 それで充分だよ。
梁家輝 僕は一時、ヤクザと対決した。当時芸能界はヤクザと向かい合ってて、あの頃が一番つらかった。撮影が続いて旅から旅。(と、ここでいきなりマギーがトイレに立つ。)
香港に着いてもそのまま乗り換えてベトナム
林建明 飛行機の中ばかり。
梁家輝 そう! 一度、香港の空港について自然と家に電話した。母が出て声を聞いた途端に涙が出た。30男が涙が止まらなくなって、声も押さえられなくなって、5分ぐらい泣いた。人だかりが出来て、警備員も不思議そうに見てた。
…声を聞いた途端に泣いたんだ。仕事も嫌で外部との問題にも疲れて不安で危険な時期だったから、母の胸に抱かれて胸の鼓動を聞いているような安心感だったよ。母には「仕事がつらくて」と言った。「終わったら帰るから」って。普段何も話さなくても、電話一本で一声聞けたらそれで十分満足。泣いたあと、闘う気力が湧いてきた。もう悩まない。

レスリーはそっと席を立ち、カーフェイの座っているソファにむかう。そしてぴったりと寄り添うように距離をつめて隣に座る。

張國榮 僕が最初に母と心が通じた時も泣いた。
梁家輝 押さえられない自然な感情だよ。泣いたあと、すごく嬉しくなる。
張國榮 あれは最悪の時だった。撮影中、恋人とケンカ別れをして、歌謡曲を聞いて運転しながら泣いてた。ちょうど母が来てて僕が泣いてることに気付いた。母が部屋をノックして言った。「お前が泣くと私もつらい」って。その一言でもうダメ。
梁家輝 力が湧いた?
張國榮 違う。ますます泣いた。母は本当に守ってくれてる。母親はスゴイよ。
林建明 みんな父親の話はないの? 面白いわね。
梁家輝 父は母を後ろから支える人。あまり出てこない。

レスリーは「父親?!」と小さな声で言い、渋い顔でよそを見ている。

林建明 自然な反応で面白いと思うわ。

マギーがようやくトイレから戻ってきたようで、さっきまでレスリーの座っていた、建明の隣に座る。

張國榮 僕の父親は死んだ。何も言うことはない。父にはマーロン・ブラントも注文した。有名な仕立て屋だったんだ。一種の天才。スゴイ人だった。印象に残っているのは背広姿。僕に教えたのはボウタイの結び方だけ。
林建明 早くに亡くなって後悔してない?
張國榮 父は夫として無責任だった。
梁家輝 そんな話ならトイレに行こう(と笑いながら、本当に席を立ち、トイレに行く)
張國榮 ははは、本当だよ。母を困らせて、いつも母を怒らせていた。(と、喋りながら目の前にあった銀色の大きなワインオ―プナーを手に持ち、それをぐるぐると回しながら弄んでいる)父のよい話なんてない。でも末っ子の僕を一番可愛がった。僕は勉強はまあまあだったけど、一人だけ留学させてくれた。一番上の姉は、勉強が出来たけれど父は女に勉強は必要ないと言った。でも姉は働きながら勉強して出世した。だから姉は尊敬してる。ある時、父が憎くて父の店の金を盗んだ。バレたけど。盗んだお金で食べ物を買ったよ。(笑)

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(第二夜はこちら)

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