『Lovely Writer』The End 感想
以下は『Lovely Writer』EP12でありThe Endの個人的な感想です。ネタバレしてますので視聴されてない方は観たあとに読んでくださると嬉しいです。更にはこの回の感想を共に語り合えたらすごくすごくうれしいです。
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●愛の中で死んでいくこと
『Lovely Writer』Ep11とEp12を観る少し前ですね、吉川ひなのちゃんが出版したエッセイの冒頭部分ってのがネットで自由に閲覧できるようになってて、それを読んだばかりでした。デビューしてすぐに売れっ子になった彼女が、親から何もかもを搾取され、心を失いつつも芸能界で君臨し、更にはそこから転落したときのことが書かれてました。さらに数日後、離婚した前田敦子、あっちゃんがAKB時代にどんなストレスの中で立っていたかという記事が上がっていてそれも読みました。私はゴシップ的なものはほぼ読まないのでふたりのあれこれを全然知らなかったのですが、どちらの記事もとても胸が痛みました。ふたりとも個性的な声をして、個性的な顔をして、そして笑ってる顔しか思い浮かびません。あっちゃんはスクリーンの中で放つ独特の存在感がまず頭に浮かびます。その彼女たちが10代の頃、睡眠時間と自由時間を極限まで削り、いつでも他人の目に晒され、ファンの要求にこたえ、笑い、過酷な世界で立っていたその瞳が見ていたものを想像するとぞっとしました。
そういったことが、私の中で『Lovely Writer』の最後2つのエピソードに重なりました。
Ep11の終わりに「4か月後」という文字が表れたし、そして緊張感がとても高いまま終わったので、この最終回の始まりが、Ep11で描かれていた会議の日からそんなに時間が経過していないことに少し驚きました。そして姉のTamと激しくやりあっていたTumが少し落ち着いたニュートラルな雰囲気でGeneをサポートしている様子に少しだけ安心を感じた始まりでした。
記者会見前のNubsibとAey。
Ep11の最後とは打って変わった、何かを決心したかのようなNubsibの落ち着き、そしてファンの目を意識してAeyを抱きしめる心の無い笑顔。つらい。。Nubsibの心が失われていくのか。
そしてそれを、まるで甘えた子犬が泣くような声を出しながら写真を撮るファンたち。
もう、めっちゃ辛いです。BLドラマでShipperが出てくると大抵痛かったりするんですが、とりわけLovely Writerが最たるものです。だって、このドラマを愛してる多くの人だって(勿論わたしも!)Shipperなんだもの! 私たちの愛は少しでも方向を間違えれば推しにこんな顔をさせてしまうんですよ(泣)
このドラマで多くの人たちはGeneとNubsib目線で観ていると思うので、そこに映るShipperの姿が自分の中に跳ね返ってきて、ほんと、めっちゃつらいですよ・・・。
そして記者会見。
あれ?質問をしてる女性記者の一人は『TharnType』でTypeと揉めた人じゃないですか。それはさておき、彼らは焚かれるフラッシュの中で私生活について聞かれるわけです。最後に、なんとかGeneとNubsibはただの兄弟のような仲で、NubsibとAeyのカップル宣言という形に持っていき、終始にこやかに記者に答えるTamは記者会見の〆としてGeneに耳打ちをします。「ここでは笑うのよ」と。Geneの顔にあるのは苦しさや絶望感。それでも言われるままに、硬い表情のまま口角を上げ、作ろうとする笑顔。ああ、もうほんと悲しい!!作り手と受け手の間には信頼と愛だけでいいはずなのに、その信頼も、愛も、どうしてこんなふうに誰かの気持ちを踏みにじったり犠牲を強いたりするものに変わるんだろうね。もう、つらいつらいつらいつらい。
記者会見をそれぞれの場で見守るTumやTiffy、Mhokら・・・。そしてMai監督のこの表情に、私はなにか救われるものが・・・
いろいろ言っても、結局みんな、ちゃんとわかってる。ひとつのチームなんだって、そう感じさせてくれるこの表情。
●Aeyをどう見ますか?
この物語の中でAeyをどう見たか。
これはきっと人それぞれ分かれるところだと思います。
私はここにも少し書いたのですが、Aeyについて複雑な思いで観ています。
mioririko.hatenadiary.jpAeyは、Tiffyにさえ見捨てられて(Tiffy、なんだよ!Aeyのこと最後まで見てあげろよッ!とは思ってる)、そしてこんなふうに泣く男の子です。メイクを崩さないようにと。結局はメイク崩れるほど泣いてしまうんですけどね。
すっごく辛い時でも、ファンや周囲のスタッフに会えばすぐさま優雅ににっこり笑う子なんですよ。自分のことを拒否する家族と、唯一自分を愛そうとしていたMhokも切り捨て、自分が唯一そこにいたいと思った場所、ショービズの世界で生きていこうとしてる男の子なんですよ。
たったひとりで。
にこやかに微笑んでも、鏡に映っているのはいつも、普段の顔よりももっと暗い顔の自分。泣いてる自分。どこまでいっても、そこには自分しかいません。
でも、Aeyが唯一望んで、そこにいる場所なのです。歯を食いしばって、そこで生きようとしているのです。彼が、彼の手で、いつかきっと幸せを勝ち取るのだと、そう信じたいです。
●Hin、いいよね。
作家デビューが決まったHinがGeneを訪れるシーン。
11話に続き、HinはすぐにGeneの部屋から立ち去ります。Hin、Geneのこと、好きだよね?片思いしてるよね?どう思います?だって、Geneの部屋を出たあといつも、こんな切ない顔。Hin、いいよね。
●そして中盤以降はひたすら甘い!
さて、ここからしばらく、まだNubsibに会えないGeneが描かれてますが、正直観ているこちらは余裕だね。
「はいはい。甘いお菓子を作るときはちょっと塩を入れるんだけど、ここはそういう塩だよね、甘さを引き立てるための」
みたいな気持ちで観てましたよ。
そうしたら甘さが、観てる人たちみんなの想像を遥かに上回ったよね!!
4か月以上会ってなかった末の再会なのに、なんですか?お洋服はデニムでお揃ですか?
そして、唇へのキス以上に甘いこのシーン!ひっ、て声でたね。
ひーーっ!
この年下感!! ひーーーーーっっ!!
Geneからも!!もうこっちは息もできませんっ!!
●王子様と王子様の物語
そしてNubsib妄想三連発。
白雪姫とシンデレラとロミジュリ。もうさー、このこってりしたシーンはちょっと笑っちゃったけど。
でもさ。
ふたりの格好は王子様と王子様です。すっごくよかった!
あのさ、ゲイの人のことを言うのに裏返した手のひらを口元にあてて「こっちの人が」って言う人がいたのね。そういう人はまだいるんだよね。そしてきっとこういうシーンでGeneにお姫様ドレスを着せてしまう感性も絶対あるのよね。
勿論、ドレスを着たい男性もいるし、それはいいのよ。Geneの場合はお姫様抱っこされるのも好きじゃないし、必要以上に甘やかされたくもない。男として男のNubsibが好きな人で、だから王子様と王子様。
世界には王子様とお姫様の世界、王子様と王子様の世界、お姫様とお姫様の世界、さらには王様とお后様10人の世界もあれば、7人のこびとだけの世界、そしてたったひとりの王子様の世界・・・幸せな世界は人それぞれ。いろいろあるのよね。
そしてさ、この後半から、Nubsibが。Geneが。向こうからこっちを見るじゃない?
この物語。最初は「BL文学」や「BLドラマ」などの作り手側の性的表現が、セクハラやパワハラになってないかという問題提起に始まり、さらには作り手である制作プロダクションや出版社についても切り込んでいき、最後には受け手である作品や俳優のファンの愛情が孕む暴力性にも言及していったじゃない?
でも最後に、気が付けば愛で溢れているんだよね。だって、その作品や俳優たちへの愛がなければ次に新しいものは生まれてこないわけだし。
この物語を作った側が、制作側からファン含めてすべての未熟な私たちに対し、ひどいことだっていろいろあるけど、それでもみんなで最善の世界を作っていこうって言ってるような、そういう愛に満ちている。私はそう感じました。こんなふうに向こうから私たちに向けて。
そして、この物語は『Bad Engineer』を書いたGeneがNubsibとのことを書いた『Lovely Writer』という小説、のような入れ子構造になってて、そう思ってたら更に、GeneとNubsibを見たある女性BL作家が作ったBL小説、となり・・・。そうやってどこまでもどこまでも入れ子になっていくうち、心の中でGeneとNubsibが、さらにはこれを演じているUpとKaoが、自分の中で距離感が遠くなったり近くなったりして、いつしか掴めなくなっていきました。
あと、Aeyから離れたMhokが、新作で主演、って部分があったでしょう。あれ「Y-Destiny」だったね。そうやって、現実とフィクションと問題提起と愛とが絡み合ってるのも好き。。
きっとこの物語は私の心の中にずっと残るのだけれども、彼らはいくつもの箱の中に入れられて、それがあんまりきれいに閉じられたから、もう手の伸ばしようがないみたいで、私は写真を撮ることも、過剰に何かを望むこともせず、ただキラキラしたものが入っている箱を眺めているような。。。ああ、でもずっとこの作品を愛してる!
(写真はWETVから引用しました)