おでかけの日は晴れ

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「I Told Sunset About You」から恋と友情と欲望について考えるのだ

2日かけて『I Told Sunset About You』全5話を観ました。時間がかかったのは英語字幕だったからなのと、1話のボリュームが結構あって、その中での展開もたまにつらくて、休み休みじゃないと観られなかったからです。

翌日になってなお、じわじわとキテる。感想、なるべくネタバレなしで書きます。

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「恋と友情」、BLのテーマとしてよく登場します。

学校や会社の中で仲の良い同性同士。多くの場合その関係は「友情」で結ばれています。しかし、そのどちらかが相手に恋をしていたら? その恋を伝えなければずっと友達でいることが出来る。しかし、恋を伝えてその思いが受け入れられなかったとき、友達の状態でいられるのか。もう友達でいることさえ出来ないのか。

私も友情と恋を分けるなにかってなんだろうってよく思うんです。例えば私は夫と付き合ってからはもう35年ほど。最初にそこには恋がありました。でも今は人生のパートナーであり一番身近で長い付き合いの友達、だと思うんですよ。こうなってしまうとついドラマ観てても「いいじゃん、友達としてずっとそばにいられるのなら」なんてことを思ったりしてしまうんです。

ところが、そうじゃない、そこには地獄がある、ということを例えば『Theory of Love』が、そして『I Told Sunset About You』が言ってくるんです。

「せめてずっと友達としてそばにいたいから」と想いを封印しようとする、そういうキャラクターは多数描かれます。『Theory of Love』のThirdがそうでした。『I Told Sunset About You』のTehは、Oh-Aewに対する気持ちをどこまで自分の中で言語化していたのかはわかりません。しかしTehは心の中にある恋から目を背けてきました。そして彼は地獄を見るのです。

 

一緒に学び一緒に遊び、誰とよりも共通の時間を過ごし、SNSで繋がり、共に笑ってふざけあって、そんな幸せな時間がいつでも自分のすぐ隣にあるのなら、それでいいじゃないか。それがずっと永遠に続けばいいじゃないか。

そう思ってたのに、その隣にいる友達が、自分がその友達を見ているのと同じように彼も自分を見ていたはずのその友達が、別の子を熱く濡れる目をして見つめているのに気付いてしまったとき。「友達でいいじゃないか」と思ってた気持ちは一瞬に崩れ落ち、自分が彼と共にある幸福な未来も消えうせ、彼の目はそこに荒涼とした地獄を見てしまいます。Tehだけでなく、Oh-Aewも受け入れてもらえない恋に絶望します。恋は時々、いろんなものをなぎ倒していく恐ろしいものです。本当に身勝手で、みんなのことなんて思えなくて、たった一人のことしか考えられなくなって、自分の恋を選ぶときに同時にたくさんの人を傷つけることもあります。その苦しさが『I Told Sunset About You』には描かれていてそれが心を抉ってきます。それでも、恋をせずにはいられない人はたくさんいて、TehもOh-Aewもそうなのです。

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このドラマには、欲望についても大切なモチーフになっています。

Tehには欲望がありました。それは夢、とも言えるもので、テレビで見た中国ドラマに出てくるような俳優になりたいという夢でした。彼はそれに向かってずっと努力を惜しまない生活を送っています。しかし彼はその夢に至るまでの欲望を何度か手放すのです。どうしても欲しい役。どうしても得たい資格。それらを、その時々の様々な理由から彼はいつも手を放してしまうのです。肝心なところで欲望に忠実になれないのです。そこにはいろんな理由があるのですが・・・しかし自分が一番欲しているものはなにかということをいつも思い、ちゃんとそこに手を伸ばすこと、そういうことでしか自分にとっての幸福は掴めないのだなあ、なんてことを思うのです。

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 いや、それを知るには、18歳である彼らはまだ、あまりにも若い。そして彼らにとってこの恋も欲望も人生初めてのものだから。