おでかけの日は晴れ

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『Lovely Writer』が提示しているもの(前編)

タイBLドラマ『Lovely Writer』、すっごくすっごくいろんな人に見てもらいたいなあって思ってる。かわいい男子好き、きれいな男子好き、BL好き、、、は勿論観るよね。あと、面白いドラマを求めている人、そして。以下に書くこんなことに興味ある人に・・・。

私たちはさ、生きていていろんな人と出会ったりすれ違ったりしているうちに、自分とは違う立場の人を気付かずに傷つけていたり、または反対に傷つけられていたりするよ。もう結構長く生きてきてるなあって思ってても、やっぱりいつまでもあるよ。何故なら、生きてる長さ分、違う立場の人を知る機会も多くなってるからさ。

そして「ああ、自分と違う立場で生きている人がいるんだ」と知ること、それが生きている間続く勉強かなって思うんだ。そしてこのドラマも、そういう視点を提示してくれている。

ちなみに『Lovely Writer』視聴方法は、現在(2021年5月)U-NEXTに加入すれば日本語字幕付きで観られます。入会1か月無料特典とかあるので活用してはどうでしょう。あとは、VPN繋いでWE-TVで英語字幕で観ることもできます。

 

今までも2回、このドラマのことを書いてきました。

mioririko.hatenadiary.jp

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このドラマ、まずはGeneを演じるUp、顔も芝居も私はすっごくツボ!顔はあまり濃くなくてこざっぱりした造りで唇ぷっくり。そして繊細で細かい芝居。そんなGeneをいくらでも観ていられます!

でもこのドラマのツボは俳優の魅力だけではありません。

最初のシーンで「あれ、これは・・・?」と思ったんです。作家Geneが小説を書きつつ、すぐにそれを全部消して「これはセクハラじゃないか!」と叫ぶシーンで。

この物語はBL作家Geneと、Gene原作のドラマに主演することになった俳優Nubsib、そして彼らを取り巻く人々の物語です。

ドラマのクランクイン前の成功祈願の祈祷シーンや宣材を撮るシーン、更にスポンサーに関するあれこれなど、BLドラマ制作現場の裏話の要素がいろいろあって興味深い。それと同時に従来のBLドラマに対するパロディ、さらには批評性も持っていることに気が付きました。

例えばGeneはBL作品について「最近の話はどれも似たようなものばかり」「どれも大学生の話だ」と言ってます。また作中のドラマの監督が原作者であるGeneに「以前一緒に制作した原作者とは違うわ」っていうシーンにドッキリ。だって、想像しちゃうじゃないですか。この『Lovely Writer』を撮ってるTee監督の前作は『TharnType』。その原作者は有名なMAME女史。。。 あわわわ、なんかドキドキするんですケド・・・!

ということで『Lovely Writer』が提示してる様々なものについて考えたいと思います。

 

★これはセクハラなのか★

冒頭シーン。GeneはPCに向かって執筆しています。

「両手を押さえつけられ、激しいキスで唇をふさがれ、彼の手が僕の服をまさぐり、ズボンの中に手を入れられ、愛撫され、僕は快感で立っていられなくなり・・・」と書くのですが、すぐにDeleteキーで全部削除。「これじゃセクハラじゃないかーーー!」と。

でもこれ、ドラマやマンガでもよくあるシーンじゃないですか。イケメンの先輩が強引に来るわけですよ。そして唇を奪われてちょっととろんとなって・・・。導入として結構使われますよこういう設定。けれど、考えたらこれは確かにセクハラです。こういうシーンについてドラマの中ではっきり「セクハラだ」と言ったBL作品は、これが初ではないでしょうか。

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実は『Lovely Writer』冒頭シーンで、大好きなドラマの一つ『TharnType』を思い出したんです。冒頭でPCで執筆しているGeneは、「彼の手が僕の両手首をつかみ、寝室の白い壁に押し付けられ」と打ってすぐに「寝室の」の部分を「バスルームの」と打ち直すのですが、その時に思い浮かんだのが『TharnType』第3話のバスルームのシーンでした。Typeは幼いころに知人男性から性的虐待を受けたトラウマからゲイ嫌いになりました。TharnはTypeがなにかしらのトラウマを持っていることを知りながら、バスルームに押し入り、嫌がる彼にキスをし、さらに・・・直接は描かれてはいないけれどフェラチオしてる様子。Typeは嫌がってはいるものの快感に負けてしまう、ように描写されています。TypeはだんだんとTharnの人間性に惹かれていき、愛するに至るというストーリーですが、『TharnType』序盤のTharnの行動はセクハラだという意見は結構多かったと思います。性的虐待を受けトラウマを持った人間が急にこんなことをされたら、それはもう激しい恐慌状態を起こしかねないことだと想像できます。

それでもしかしたらTee監督は、『Lovely Writer』冒頭で『TharnType』という作品に対しての自己批判、またはそこからの問題提起を提示したのでは・・・と感じ、「これは・・・このドラマはただごとではないかも・・・!」とゾクッとしたのです。

BL作品に関するラブシーンに関しては、Ep3でも言及しています。

Geneは編集者から激しいラブシーンが多い刺激的なBLを書くように求められていて消耗しています。そして夢の中でも編集者にダメ出しを出されています。

夢の中でGeneは、もっと人物描写をしたいと言いますが、編集者の意見は「これはエンタメなの。そしてリサーチ結果でもわかるけど、みんなホットなラブシーンを求めてるのよ!」「でもこれはハラスメントじゃないですか?」「何言ってるの!濡れ場が足りないわ。3章に2章は濡れ場でいいの!」と言われ、そういったラブシーンが書けないGeneが夢でうなされるというシーンです。ここでも、ある種のBLドラマや原作においてセクハラ上等なエロシーンを作り手も受け手も求めている現実を描いています。

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 ★カップリング問題★

ある作品を大好きになると、そこに登場していた俳優たちのカップリングへのファンダムが出来上がります。私も、このカップリングで永遠に観ていたい・・・❤と思う作品、そしてカップリングがいくつもあります。いつしかそれは、ドラマの役の〇〇と△△、『Lovely Writer』を例にとるならばNubsibとGeneではなく、KaoとUpのカップリングに萌えを感じるようになります。

そういったファン意識に思いっきり冷や水をぶっかけてくれたのも『Lovely Writer』!

Gene原作でドラマ化した『Bad Engineer』はNubsib・Aey・Mhok演じる3人の男子の恋物語のようです。制作発表と同時に「NubsibAey」カップルに対するファンダムができ、彼らが目を交わす瞬間、ちょっとでも近づいた瞬間、それら一挙一投足に熱いまなざしと声援を送り、加熱する愛の言葉をスマホに叩きつけます。

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しかし現実は、Nubsibの心の中にはGeneのことしかなく、Aeyのことは眼中にありません。さらにAeyとMhokはAeyの家族問題に絡んだ確執がある様子。それでもドラマの中でNubsibはAeyを強引に落としていく役を演じなければならないし、そんなAeyに恋をし、支える役を演じているのはMhok。
そんなNubsibは劇中でAeyにキスすることに抵抗があり、どうしてもできませんでした。プロデューサーも監督も、これはBLシリーズなんだし、フリでなくリアリティあるキスをしないとダメだと苛立ちながらNubsibに要求します。

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AeyはMhokに対しては、カメラが回っていないところでは言葉を交わすことさえしたくないほど避けています。

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でも彼らはファンがいるところではカップリングとして仲良く寄り添うんですよ。ああ、これが営業カップル!!

そして・・・こんな状況でBLドラマ作っているなんて・・・地獄じゃんッ!俳優たち、みんなそれぞれめっちゃツライし、どんだけ打たれ強いの・・・?!

私の推しのあの子とあの子が、こんな地獄を味わっていませんように・・・。Behindシーンで見たまんまのような、カメラが回ってない状態でも仲良しでありますように・・・と思わずガクブルしつつタイの神様に祈ってしまいました!

そう、彼らは俳優としてその期間、近くにいて精いっぱいいいものを作ろうとして努力している。役を越えて仲良くなるケースもきっと多い(と思いたい)のだろうけど、あまりそこにリアルカップルという夢を押し付けちゃダメ絶対! 

そんなことをこのシーンを観て感じたのでした。

 

かなりNubsibから塩対応されているにも関わらず、ファンの望むNubsibとのカップリングを忠実に成就させようとするAeyはもっとも俳優としてプロ意識を持っているともいえるのか・・・。それとも彼の歪められた承認欲求のせいなのか・・・。

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★カミングアウト問題 その1★

Ep4でGeneが大学の同級生たちとの飲み会のシーン。久々に会った友人たちは、BL作家になったGeneに驚きます。「そういえばお前はかわいいな」「大学の頃からモテたのに恋人を作らなかった。もしやお前・・・?」と次々と聞きます。Geneは「ゲイかってことか?BL作家の殆どが女性なんだから、その問いはおかしい」と言うも、「学生の頃から男が好きだったのか?」と決めつけるように聞いてきます。Geneははっきり否定しませんが明らかに不快そう。さらに「私たちは友達なんだから、大丈夫。応援したいの。ゲイでも問題はないわ」「そうだそうだ」と言ってきます。恐ろしいシーンです。彼らの好意の言葉の裏に何か匂うものを感じます。Geneはきっぱりと言います。「どっちだろうとお前らには関係ない」と。

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このシーンでは、誰も直接的にGeneを否定していないし揶揄していない。そして友人たちは、Geneがゲイならそれをカミングアウトするべきだと考えています。それは、自分たちがそれを否定するような愚かな人間ではないことを表明したいがために、という意思を感じてしまいます。その彼らに対してなにか不快なものを感じるし、そう思うと同時に、自分自身が様々な関係の中でその傲慢な側に立ってはいないか、ということを改めて考えさせられるシーンでした。

カミングアウトに関するシーンは後半にも出てきますので、それについてはまた後日に。

★酔ってしちゃうのはダメよ問題★

個人的に大好きなEp4の酔っぱらったGeneのシーン。

だって・・・だって・・・めっちゃ可愛いんだもん、Geneが!

普段はあんなにNubsibからの好意に戸惑いつつ、突き放したり怒ったりしてたGeneが、年下のNubsibに子供のように甘え、「俺だって好きだもん」みたいなこと言っちゃったり、積極的にNubsibにキスしようとしたり。

私はね、「いいじゃん、Nubsib、キスしちゃえば!今まで『役のレッスンのため』とかなんとか言いながらしたくせに、なんでここでしないの?」って思ったね。とにかく、一切流されません、Nubsibは。「何をしようとしてるのかわかってるの?」とGeneに聞いてもGeneはただコクコクと頷くばかり(ここ、めちゃ可愛いんですけど!!)。いいじゃん!そんならいいじゃん!!私の心の中のP'BUAがそうやって煽ってますよ。

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でも、しません。7話でわかるのですが、Nubsibは本当に、本気でGeneのことを愛しているからです。
へべれけに酔った相手がなんとなく合意した様子を見せて、それに乗じてヤッちゃって、そのことを許してもらえなくて苦しんでいるのが『Chance to Love』のKengklaでした。Technoにずっと片思いしていたKenklaは策略を企て、酔ったTechnoと一夜を共にした挙句、翌朝それは酔ったTechnoが自分を襲ったのだと彼に嘘をつきました。確かにそれはレイプではなく、Kenklaの誘いに泥酔状態のTechnoはも乗ってしまったのですが、結局Technoはその夜のことを許しませんでした。(そう考えると、『Chance to Love』でKengklaとTechnoにハッピーエンドを迎えてほしかったけれども、はっきりとそう描かなかったことに今更ながら合点がいくかも)

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ここでNubsibが思いを遂げたとしても、それは本当に彼の望むところに行き着くことは出来なかったかもしれません。Nubsibは「お互いがもっと準備ができるまで待つ」と言います。

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ただ、その日、級友たちから言いようのないストレスを受け、酔っぱらったGeneはどこか哀れです。

「今夜は一緒に寝てくれないか」と言うGene。そして「抱きしめてくれ」と言うGene。彼の心の中には何があるのか。傷ついているこどものようで切なくなります。

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『Lovely Writer』が提示している様々なもの、後日、後編に続きます!

(画像はWE-TVより)